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とは?

ノーザン・ソウルという言葉はよく聞く。イギリスで黒人音楽に影響を受けた白人のソウル・ミュージックということであろう。ということはアイリッシュ・ソウルもこのノーザン・ソウルの一種なのか?

まあ多分そんなに遠くない推測である。

Nuala O'Connorの本「Bringing it all back home: The influence of Irish music」が「アイリッシュ・ソウルを求めて」と邦訳されているところを見てもどうやらこの推測は間違ってない。

さて、オコナーの本の出だしはどうかというとこうである。

I have a theory that soul music originally came from Scotland and Ireland. ---- Van Morrison

「私にはソウルミュージックがもともとはスコットランドとアイルランドに起源を持つ、という理論を持っている」---ヴァン・モリソン

「起源」という言葉は訳としては強すぎるかもしれないが、ロック音楽界最後の大物ヴァン・モリソンの主張は大方そういうことである。それほど詳しいわけではないがヴァン・モリソンと言えばストーンズなどと同時期に活動を始めたロックバンドThemが有名であるが、ソロになってからもブルースを中心にソウル、トラッドなどにも幅広く音楽性を広げ、一部に熱狂的なファンがいるミュージシャンだ。つまり影響力がある。

一言で言えばヴァン・モリソンの理論はロックやその後のポピュラー音楽の源泉にアフリカ系アメリカ人のブルース、ジャズを置く一般のポピュラー音楽理解とは別に、または並列に、アイリッシュとスコティッシュを置く、という戦略であり、「政治」である。イングリッシュ、またはブリティッシュと言ってないところがミソではあるが、どうしてこうなるのか?

カルチュラル・スタディーズ系のポピュラー音楽研究との「政治」の違いは明らかだ。カルスタ系だとポピュラー音楽の起源がアメリカの黒人(アフリカン・アメリカン)であることは決して揺るがない。(もちろんこれにも多少の重点の置き方に違いはあろうが。)

さて具体的にオコナーはこのヴァン・モリソンの言葉を引いた上で次のように書いている。

Irish traditional music, then as now, was primarily dance music, jigs, reels, and hornpipes, played by rural working people for communal celebrations and events, such as fairs, weddings, wakes, and so on. In the case of America, Irish traditional music and song merged on the Appalachian frontier with other indigenous music to form American folk music, and further south with the music of black slaves to influence the blues.

ちょっと長いが簡単にするとこうだ。アイルランドの伝統音楽は移民とともにアメリカに渡り、アパラチア山脈辺りで(先住アメリカ人などの)土着の音楽と混ざり合い、フォークミュージックを形成し、もっと南の方で黒人奴隷たちの音楽と混ざり合ってブルースに影響を与えた、と。

カントリーやブルーグラスのような基本白人のポピュラー音楽に影響を与えたのは分かり易いが、ブルースやソウルはどうなんだろう?

この議論の流れに以前私が書いた学会のパネルがある。当然というべきかどうかは分からないが、カルスタ系のポピュラー音楽研究にはこういった議論はまずない。ヴァン・モリソンもまず出てこないし、アイルランドへの言及もほとんどない。

単純化すればカルスタの「政治」とアイルランド研究の「政治」がまるで異なった方向を向いてるからだが、ではどちらにもかかわっている私はどうすればいいのか?

実証的にというより政治的には6:4でカルスタの「政治」を私は支持する。アメリカの黒人がポピュラー音楽の原点で「よい」し、その代りアイリッシュ・アメリカンの貢献もそれなりに評価すべきである。またマージービートを生んだリヴァプールのアイルランド系移民の貢献も評価すべきである。ポール・マッカートニー、ジョン・レノンはアイリッシュ系であった。「優等生」的に思われがちだがザ・ビートルズの音楽は貧しい「不良の」アイルランド系移民が作った音楽であった。

でも6:4とか煮えきれないことを言ってるから私はどちらの「政治」からも周縁化されてしまうのかもしれないが・・・。とほほ。
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