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と不安。

Peter Nyersの'Rethinking Refugees'を読了。アガンベンの「裸の生」と生政治論を中心に、デリダの「ホスピタリティー」の議論を絡め、最後にホーミ・バーバの言葉で締めるあたりほとんどカルスタじゃねえか、と思った。

バーバからの引用、
[The human is] to be identified not with a given essense, be it natural or supranatural, but with a practice, a task. The property of the human being is the collective or the transindividual construction of her or his individual autonomy: and the value of human agency arises from the fact that no one can be liberated by others, although no one can liberate herself or himself without others.

まあヒューマニズム(またヒューマニタリアニズム)の本質主義批判(「人間とは既定の本質ではない」)と「人間の行為性の価値」を救う側ではなくて、一般的に言って救われる側に認めること(「誰も他者によっては解放されえないが、他者なしには誰も自分を解放できない」)が主張されている。

ここから難民の声を「普遍的な人類の声」としてではなくて「政治的なもの」として尊重し、難民を巡る国際的な決定に主権国家やUNHCRのような国際機関だけではなく、難民そのものを参入させる必要を結論付けている。

また難民の「文化権」、文化活動(歌、音楽、絵画、その他)における自己表現にもっと目を向けるべきだ、という結論も伴う。ここにも政治と文化を分けないカルスタ的な視点がある。難民が突きつける事態に興味がある者は法律を学ぶだけではなく、音楽、小説、絵画、映画、テレビ、その他の文化表象を読み解く技術を身につけろ、と。

おおかた賛成である。カルスタのボキャブラリーが専門(法律や経済学など)を超えて共有される可能性、そのことでインターディシプリンが達成される可能性に私も期待する。

不安があるとすれば、Nyersの理論中心のスマートな国際関係論と私がアフリカで実感した「アフリカ」(口に合わない川魚、意外と多いロレックスをはめた人道主義者との遭遇、舗装のないガタガタ道を何時間も走ったこと、アフリカ現地人を下に見ている元ルワンダ難民)とすんなり合致しないことである。

まあ理論バブルが一段落してからかな。

関係者が崇拝している元UNHCRトップの緒方貞子をマイクロソフトのグローバル戦略に易々と乗っかってしまったことで批判するNyersは正しい。「デジタル格差」を無くせば「人類」という普遍的なコミュニティーが達成される、と主張することぐらい愚かなことはないからね。

おっと書き忘れるところだったが、

もしNyersが主張するように難民を巡るUNHCRのような国際機関のヒューマニタリアニズムの原点が19世紀イギリスに始まる動物虐待反対のエートスにあるとすれば(捕鯨に反対する過激な活動家を想起するとそうだと思えるが)、まさに「難民」は動物(とくに絶滅の危機が疑われている動物など)の等価として表象される可能性が大きいということになる。

ここでもデリダの動物/人間という形而上学的な二項対立を「脱構築」するというモチーフの重要性がある。

でも期待を込めて言えばアフリカにはゴリラを研究しに来る自然科学系の学者もいっぱいいるわけだから、カルスタは自然科学もカバーしなければいけなくなるだろう。

そうすれば自然科学者と文化研究者、社会科学者が一つの席について議論が交わせることになる。

でも「専門」の壁は厚いと思うね、まだまだ。
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