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三池炭鉱跡には行ってみたい。

松本健一著『谷川雁・革命伝説』(河出書房新社)を読了。いい本であった。

革命家にして詩人であった戦後唯一の存在と言える谷川雁は私と同郷熊本は水俣の出身であった。だからずっと気になってはいたのである。詩作品もアンソロジーなので数篇しか読んだことないけどね。

おそらく政治思想家としては古いタイプのアナルコ・サンジカリストであり、今では色あせてしまった毛沢東主義者であろう。故にあまり過大評価できない。でも詩人としての言葉に「革命」の力が漲っていた点では戦後日本では稀有な人であったと思う。

だから詩を書くことと革命を組織(オルグ)することにまったく矛盾がなかった。三井三池炭鉱争議での敗北以来革命の拠点にするはずだった筑豊(大牟田から荒尾にかけとの地方)を捨て、詩を捨てて、上京した谷川は「ラボ教育センター」なる珍妙な団体の重役となった。この本を読むと言葉をとおして死ぬまで「革命」を諦めてなかった谷川雁に驚愕というか、畏怖の念を抱いた。「ラボ」の子供たちに独特な言語教育を施すことによって「革命」をやはり囁いていたのだ。

ウルトラナショナリズムを革命のエネルギーに転化するという夢のような政治思想を竹内好などから学んでいた、とは松本の言だが、やっぱり危険な香りがぷんぷんする。でも詩人としては断筆の決断をも含めてやはり一流である。

「この世界と数行のことばとが天秤にかけられてゆらゆらする可能性」を信じていた頃の谷川雁の言葉、それに圧倒され、「革命」へと扇動された若者が大勢いたと言う。さもありなんというか、ね。

「毛沢東」

「いなずまが愛している丘/ 夜明けのかめに

あおじろい水をくむ/ そのかおは岩石のようだ

かれの背になだれているもの/ 死刑場の雪の美しさ

きょうという日をみたし/ 溶岩のなやみをみたし

あすはまだ深みで鳴っているが/ 同士毛のみみはじっと垂れている

ひとつのこだまが投身する/ 村のかなしい人達のさけびが

そして老いぼれた木と縄が/ かすかなあらしを汲みあげるとき

ひとすじの苦しい光のように/ 同士毛は立っている」

いい詩だな、谷川雁の肉声に扇動されてみたかったよ。そうすれば革命家になれたかもしれん。ロマン派だけどね。

松本は高度成長期に入って新しい時代に入ったのが東京オリンピックの1964年だと言う。この年以来政治を語るボキャブラリーが一新されることになり、谷川は沈黙を保つことで伝説としてしか存在しなくなったそうだ。しかし学生運動の時代に再び谷川の伝説となった言葉が力を持ったことからすると、あながち大嶽秀夫などがポストモダン思想家として谷川を再評価しているのも間違いではないのかもしれない。

まあでも近代化のモニュメントとしての三池炭鉱跡には行っておきたい。廃墟としての魅力も抜群だし・・・。
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